昨年度の社会包摂デザイン・イニシアティブの活動報告が刊行されました。私は主にデザインシンクタンクと、ソーシャルアートラボのProject 2を担当しました。以下は、コラム「ソーシャルアートラボ 2.0 ―社会包摂デザインへのアプローチ」(p. 14)の一部です。
==(前略)アートはデザインと異なり、課題解決を目的とした活動ではありませんが、自身への内省を促したり、他者への共感を生んだりしながら、現状を変化させる状況をつくり出し、人間関係に変化を及ぼすことができます。
一方、私たちの組織や社会 には、こうした活動を阻害する要因がいくつもあります。例えば、新しいやり方を 提案しようとしても、面倒がられるから言えないとか、提案しても「前例がない」 と採用されないなどの状況です。前者は、心理学者エイミー・エドモンドソンの言 う「心理的安全性」(自分の考えや気持ちを気兼ねなく発言できる雰囲気や環境)が 担保されていないからですし、後者は、社会学者ロバート・マートンの言う「目的 の転移」(目的を達成するための手段が目的化してしまい、そもそも達成すべき目的が忘れ去られること)が起こっているからです。とは言え、旧弊にとらわれ多様性を排除していると、組織や社会が凋落することは火を見るよりも明らかです。こ れらの阻害要因をどう克服するかは、一つの大きな課題です。
もう一つ重要なのが、個別の活動を既存のシステムやほかの活動と連携させると いうことです。イギリスで2012 年から 2016 年にかけて、芸術文化が個人や社会 にもたらす変化を包括的にかつ実証的に明らかにする大規模な「文化的価値プロジェ クト」が実施されました。その報告書では、これまで個別の活動と個人の変化にばかり目が向けられてきたものの、芸術文化が人に与える影響のメカニズムはそのように直線的でシンプルなものではなく、より複合的で生態学的なものであることが強調されています。「生態系」として作用するような仕組みをつくる。これももう 一つの重要な課題です。(後略)==
今年度から本格始動の予定です。面白い企画が形になるといいなあ、と思っています。
報告書はこちらのページからダウンロードができます。
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